FC2ブログ

バッタンバンで晴読雨耕

バッタンバンを中心としたカンボジア北西部の情報ブログ-大学教育、地雷、農業、開発、投資に関する話題から ホテル、レストラン情報まで

 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 

書籍「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」

世界的な作家であり研究者であり、
あちこちで紹介され、語りつくされてきたダイアモンドの書籍を、
今更紹介する必要もないように思うが、
カンボジアという切り口で紹介じみたことをしてみようと思う。

ダイアモンド自身についての紹介は割愛。

原著のタイトルは「Why is Sex Fun?」(なぜセックスは楽しいか?)。
ダイアモンドのような学者でなければ、
興味本位の低俗な内容となりそうなものだが、
この問いも含めた人間の性にまつわる問いにつき、
非常に軽快なタッチで様々な研究結果や学説を紹介していく。

大学に入りたての頃に読んでいたら、
専攻が変わってしまっていたのではないかと思うほど刺激的な内容である。
社会学のトレーニングを受けた立場としては、
「Nature v. Nurture」(生まれか育ちか?)の議論においては後者を支持せざるを得ないのだが、
人類学、生物学の視点が無視出来ないものであることをあらためて認識させられた。

本書の中で特に目を引いたのは、
男は何の役に立つのかという厳しい問である。

「メスと子に提供されるサービスという点で、ほとんどの哺乳類のオスは精子を注入する以外は役立たずである。彼らは交尾が終わるとメスと別れるので、子を養い、守り、しつけるという重荷はそっくりメスが負うことになる。しかしヒトの男性は(常にではないが、たいていは)相手と子のそばにとどまる。その結果としてつけ加わった男の役割が、われわれ人類の最も大きな特徴の進化に決定的な役割をはたしたと、多くの人類学者は考えている。」(P. 148)

その役割とは、古い時代においては「狩り」であり、
現代社会においては「金を稼ぎ、食物を家に持ち帰る」というものである。
しかしながら、
なんとなく納得してしまいそうなこの仮説についての研究は、
これとは全く逆の結果を示しているという。

パラグアイで行われた調査において、
女性が子育ての合間にヤシを砕いて取ったでんぷんや集めた果実や昆虫の幼虫のカロリー量は、
男性が狩るイノシシやシカ、ハチミツのカロリー量よりも大きいというのだ。
しかも、男性は捕った獲物の3/4を家族外に分け与えてしまうという。
他の国で行われた調査でも類似した結果が示されたというから興味深い。
(しかしながら、狩りのうまい男性のほうが部族内ではモテるというから不思議な話である。)

現代社会においても同様で、
女性は仕事と子育てという2重の役割を果たすことが求められる一方、
男性は仕事に集中しがちであり、
男だから出来るという役割がなくなりつつあるというのが現実であろう。

カンボジアを含めた「南の国」において、
男性と比べ女性のほうが働き者であるというのは、
こうした国で暮らし、仕事をしたことがある人間にとっては納得がいくところではないだろうか。
事実、カンボジアの経済統計を見れば、
ビジネスオーナーの半数以上が女性であり、
家計を握っている女性も少なくない(この点については微妙なところであるが)。
他方、レストラン、飲み屋街、市場、様々なところで、
「旦那が新しい女をつくって逃げたから、私が仕事をして養育費を稼いでいる。」という話もよく耳にする。
そして、金のない男はなかなか結婚出来ないというのも現実だ(この点についても調べた訳ではないが)。

ここにおいても金のある(食物を持って帰れる)男が好まれる割りに、
実際にはあまり役に立たない男というイメージが浮かびあがってくる。

「カンボジアの民話世界」においては、
「女の世渡り」、「怠け者の完璧な妻」と題された男女にまつわる2つの伝承話が紹介されており、
後者は「役立たずの男」をまさに示した話である。

話は若干逸れるかもしれないが、
カンボジアにおけるジェンダー研究で見逃せないのは「チュバッブスレイ」(女性訓)であろう。
これは2007年までは中学校で教えられていたもので、
女性省からの要望により縮小されたものの、
現在においても一般論として賛同を得ている考え方である。

この女性訓には男尊女卑的な意識が強く反映されており、
上記を踏まえれば、
大して役に立たない男がエラソーにしているということになろう。
(翻って、我が国においては女子力の高い男子やイクメン等、
男性が女性の伝統的価値観、役割に寄って来ているという現象があるのは興味深い。)

さて、こんなことをズラズラ書いてきた男の私。
何かの役に立っているのだろうか?

本書にはこのような興味深い仮説や研究結果がふんだんに盛り込まれているので、
特にジェンダーについて関心のある方にオススメしたい一冊である。

 

2016年及び2017年上半期地雷・不発弾被害者数

疎かになっていた地雷除去・不発弾被害者数について、
まとめておこう。

2016年のCMVIS(Cambodian Mine Victim Information System)、
2017年上半期(1~6月)の統計を基にした被害者状況は以下のようにまとめられる。

2016年の地雷・不発弾の事故件数は72件、被害者数は83名。
内訳は、
地雷事故数が45件、不発弾事故が27件、
事故被害者は42名が地雷、41名が不発弾によるもの、
25名が死亡、58名が負傷。

州別の被害者数では、
バッタンバン州が16名で最多、
プレアビヒア州が、バンティアイミアンチェイ州が各11名、
オッドーミアンチェイ州が9名、
パイリン州、ポーサット州、コンポンチャム州が各7名、
クラチェ州が4名と続いている。

2015年の被害者数は111名、
2014年は154名、
2013年は111名。

2017年上半期の地雷・不発弾の事故件数は23件、被害者数は32名。
内訳は、
地雷事故数が11件、不発弾事故が12件、
事故被害者は12名が地雷、20名が不発弾によるもの、
6名が死亡、26名が負傷。

州別の被害者数では、
オッドーミアンチェイ州が最多で10名、
プレアビヒア州が6名、
コンポンチャム州が4名、
バンティアイミアンチェイ州、パイリン州、ラタナキリ州が各3名、
ポーサット州が2名、
バッタンバン州とコッコン州が各1名と続いている。

2016年の同期の数字は49名、
2015年の同期が67名、
2014年が101名であった。
上記のとおり、
年間をとおした統計からも減少傾向が確認される。

事故ゼロを目指す政府からすれば、
まだまだ努力が必要なところであるが、
順調に被害者が減っていること自体は喜ばしい話である。

 

コンポントムの巨大バッタ

バッタンバンではないが、
トンレサップ湖の反対側、
コンポントムで巨大なバッタを捕獲した。
鮮やかな黄緑色の立派なお姿である。

トノサマではなく、キングバッタかと思い、
昆虫に詳しい方に聞いたところ、
イナゴに分類されるらしい。
村で食べられている「バッタ」もこれに当たるようだ。

Giant Grasshopper 1

大学へ持ち帰った後、
現在はspecimenとして瓶の中に保存されている。
色が落ちてしまったのが少し残念だが、
個体のサイズはタバコの箱との比較でご理解頂けるであろう。

Giant Grasshopper 2

バッタンバンの巨大バッタはspecimenとして保存することは出来なかったが、
いずれこれらを集めて展示するようなことも出来ないだろうかと考え始めている。
昆虫マニアの知り合いに相談してみることにしよう。

 

カンボジア政治の展望

アメリカ大統領選挙、イギリスのEU脱退、コロンビアの国民選挙・・・。
昨年は専門家やメディアの予想に反する政治判断が世界的に多く見られる年であった。
(2017年は大方の予想どおりとなっているが。)

プノンペンの建設ラッシュやイオンモールに集う若者、家族連れを見る限り、
カンボジア社会、経済成長は非常に安定したものであるように見えるが、
10年以上この国を観てきたウォッチャーとしては、
このところの国内政治の動きは無視出来ないレベルに達しつつあるとも感じている。

国政選挙を1年後に控え、
ここで大きな流れをまとめておきたい。

現在のカンボジアの政治状況は、
2008年、2013年の国政選挙結果を踏まえ、
今年6月のコミューン選挙、
来年7月の国政選挙を見据えた与野党の攻防という流れの中にある。

2008年の国政選挙における与党人民党の獲得票は全体の58.1%、
獲得議席数は90議席(定数123)あった。
対する最大与党サムランシー党の獲得議席は26。
内戦、UNTAC、その後の選挙の度のゴタゴタも、
今後は安定した政治体制へ移行していくのだろうと感じた者もいたように思う。

こうした流れを変えたのは、
2013年の国政選挙であった。
人民党が獲得議席を22も減らし68議席、
サムランシー党と人権党の統合による生まれたカンボジア救国党の獲得議席数は55。
与党、政権を脅かすには十分な躍進であったと言える。

Strangioが示したとおり、
野党躍進の最大の理由は若い有権者の増加であると言われている。
950万人の投票者のうち、350万人は18歳から30歳。
150万人は初めて投票権を持った若者であった。
(2008年のこちらの記事とは対象的な状況と言っていい。)

政治家や公務員の汚職・不正、土地の収奪、人権に係る問題などはあるものの、
International Republican Institute (IRI)が、
2006年から実施してきた意識調査を見ると、
国がよい方向へ向かっているという回答は2006年には60%であったのに対し、
2008年までは上昇を続け約80%となって以降、
2013年1月まではほぼ同じレベルで推移して来ていた。
この調査を見る限り、
与党が大きく議席を減らす理由は特に見当たらない。

しかし、若者の多くは野党支持に回った。
普段学生に接し、話をしている立場からすれば、
政策について議論が出来るレベルにある学生は非常に稀である。

当時の新聞記事もその点を指摘していた。
3/4の若者は「民主主義」の言葉は知っているが、その意味は分からないと回答しており、
「分かる」と回答した者の中でも「選挙」「投票」という言葉を使ってそれを説明出来た者は半分程度。
60%の回答者は政治について議論をしたことがないといい、
92%は公務員に対して意見をしたことがないという。

野党が掲げる政策によって生じうる義務(納税)や
影響(人件費高騰による外国資本の流出)等を踏まえ、
野党の政策が支持されていたとは考えにくく、
そうした若者たちが野党支持に回った背景には、
群集心理、お祭りムードが大きく影響した結果であったものと思われる。

それでは、野党支持という群集心理、お祭りムードはどのようにして生まれたのか?
これにはいくつかの仮説、説明がありえるであろう。

現状に対する不満、将来へ対する不安に対し(いつ、どの国でもあり得るだろう)、
救国党が用いた「変化」という分かりやすいスローガンは扇情的であり、
ベトナム人に対する反感を増長させるようなレトリックも有効な手段であったと考えられる。
そこに来て、
選挙直前になっての亡命中のサム・ランシー党首の恩赦、帰国。
この「凱旋帰国」がムードに更なる火を付けたことは疑う余地はないであろう。

また、他国同様、スマートフォンやFacebookの普及も大きく影響したものと思われる。
Facebookによって広がったデジタル「市民運動」を象徴する人物がティ・ソヴァンタであった。
10代の高校生ながらその容姿と反政府的なポストで、
20万人のフォロワーを持っていたとされている彼女の当時のコメントからは(厳密には選挙後)、
若者の間で蔓延していたムードを感じ取ることが出来る。

2013年の国政選挙後、同年11月に実施されたIRIの調査では、
国がよい方向へ向かっているという回答は過去最低の55%にまで低下、
逆に、悪い方向へ向かっているという回答も過去最高の43%と過去最大となった。
2014年にAsia Foundationが行った調査も同様の傾向を示している。
59%の回答者が国が悪い方向へ向かっていると答えた一方、
32%は悪い方向へ向かっていると回答している。
お祭りムードによる気分の高揚が選挙結果に反映されなかったことが、
こうした結果に影響していることは想像に難くない。

こうした事態に大きな危機感を感じたのは当然ながら与党人民党である。
選挙後のデモを鎮圧し、政権を再び確立した後には、
汚職対策といった党内の引き締めや
若者の間における支持拡大にも本格的に動き出した。

昨年も様々な動きが見られたが、
今年6月のコミューン選挙、来年の国政選挙を前に、
2017年も様々な出来事が起きつつある。

与党批判を強める政治アナリストの中には強い圧力がかかっているとされ、
国外脱出の動きも見られる。

国会では裁判において有罪となった者が党首にある場合、
その党は解党されるという法案が成立、
それに先だってサム・ランシー氏が党首を辞任、
副党首の職にあったケム・ソカー氏が新党首に就任するに至っている。

「変化」を求める若者の代表であったティ・ソヴァンタはいつの間にか人民党支持に回り、
サム・ランシー氏に対し名誉棄損の訴えを起こすに至った。
経緯は当然不明ながら、
救国党からは人民党による引き抜きであるとこれを批判している。

政治家のFacebookアカウントに対する「like」の数を巡る論争に見られる通り、
いまだ市民レベルでは建設的な政治議論が行われるレベルに達したとは言い難い状況。
来年の選挙に向けては、
やはりどのような「ムード」が醸成されるのかがポイントになると思われる。

カンボジアウォッチャーの1人としては、
カンボジアの人々が自ら判断し、
よい社会づくりが進むことだけを期待するしかないのだが、
不安要素が蓄積しつつあるのも現実。
まずは来月のコミューン選挙に注目である。

 

書籍 「Hun Sen's Cambodia」

カンボジア関連の本は和文、英文問わず、
目を通すようにしているが、
現在進行形のカンボジア政治について言えばこれがベストの一冊であろう。
(そもそもカンボジア政治を扱っている本自体が少ないのだが。)

新聞離れの昨今だが、
カンボジア国内の動き、
特に来年の国政選挙へ向けての動きは看過出来るものではなく、
それなりの知識武装は必要であると思われる。

著者のStrangioは当地英字新聞記者であった経緯もあり、
本書は過去数年の政治情勢の総まとめといった作りとなっている。
過去の新聞を検索する手間なく、
政治の大きな流れを掴むことができるのだからありがたい話だ。

題名にあるとおり、
本書の大部分はクメールルージュ以降、
この王国が如何にして「フン・センのカンボジア」になったかをなぞるものだ。
異論反論、細かな意見はあるかもしれないが、
大まかな流れを掴むのには十分な内容であろう。

過去の膨大な記録の積み上げを行う一方、
Strangioはカンボジア社会、或いは政治を「ミラージュ(蜃気楼)」という言葉でまとめる。
より具体的には、
「an illusion of Western democratic forms behind which the country operated much as it always had」(P. xiv)
(表面的な西洋民主主義の裏で、これまでどおりの国家運営がなされている。)
ということだ。

フランス人社会学者Serge Thionの
「Khmer reality lies shrouded by many veils.」(P. 265)
(クメールのリアリティは多くのヴェールで隠された中に存在している。)
という言葉の引用も印象的だ。
タイ、ベトナム、フランス、アメリカ、中国、そして「国際社会」の影響を受け入れ、
それらの流儀、レトリックといったフォーマリティを一見上手に使いこなしつつも、
国、社会の本質は変わっていないということである。

「現在進行形のカンボジア政治」と書いたとおり、
本書のエピローグでは2013年の国政選挙を巡る動きが綴られる。
本一冊を読むのが苦痛という方にも、
この部分だけでも読むことをオススメしたい。
過去数カ月のカンボジアの国内政治の動き、
その背景を理解するには十分な情報が掲載されており、
来年の選挙への展望という意味でも示唆に富んでいる。

2013年の選挙では、
大方の予想以上に与党人民党が議席を減らし、
サムランシー党と人権党が統合されて出来たカンボジア救国党が大きく躍進を果たした。
人民党は議席を22減らし、68議席、
救国党は55の議席を獲得した。、
人民党、そしてフン・セン政権を脅かすには十分な結果である。

本書によれば、
カンボジア救国党躍進の理由は若い有権者の存在であった。
この選挙において、
950万人の投票者のうち、350万人は18歳から30歳、
150万人は初めて投票権を持った若者であったという。

これら多くの若者は、
救国党党首サム・ランシー氏の「変化!」という単純なスローガン、
反ベトナム、賃上げといったレトリックに引き寄せられ、
「変化」を現実のものとする一歩手前まで迫ったのである。

現実的な政策論争という点では全く物足りない状況ではあったが、
バッタンバンの町中で実施されたお祭り騒ぎのようなパレードからも、
「変化」を求める若者の熱意だけは伝わって来たことを覚えている。

「変化」ということは様々なことを意味するものだ。
来年の国政選挙では「変化」が見られるのか。
見られるとすれば、
それはどのような「変化」なのか。

有権者、そしてそれを代表する政治家の方々にも歴史を振り返り、
賢い選択をして頂けるよう願いたいものだ。

 

« »

08 2018
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
プロフィール

バッタンバン長

Author:バッタンバン長
カンボジア王国バッタンバン在住、バッタンバン長です。
バッタンバンを中心に、開発援助業務、大学講師、社会調査、日系企業進出・投資のお手伝い等をやっております。
お問い合わせ等は、下のメールフォームからお願いします。

記事の検索
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。