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書籍 「経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える」1

経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える
(2013/03/30)
ダニエル・コーエン

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世界の歴史から我々が生きる現代、そして、これからについて示した本書。

日本語のタイトルには一万年とあるが、
中心は過去千年程度の話。
「悪徳の栄え」の意の原題のほうが内容にも合っているだろう。

ロジカルな構成という点で難しさも感じられたが、
本書の全体を理解するのに助けとなるのは、
序文に示されている以下のテーマと思われる。
(序文に含まれる小項目の題名も概ね以下のようなものだ。)

悪徳の栄えとしての経済的繁栄
マルサスの法則
ヨーロッパの隆盛、世界支配
経済成長に関する考察
新たな経済法則

度々本書に登場するマルサスの法則については、
以下のようにまとめられている。

産業社会の時代が訪れるまで、長年にわたって社会を支配してきた掟は、単純でうんざりするものだ。(中略)すなわち、経済成長が人口増を引き起こしてきたのだ。つまり、富の増加は、出生数を押し上げ、子どもや大人の死亡数を減らす。すると、全員の食いぶちを確保するための耕作可能な土地が不足するという致命的な事態が訪れる。人口過剰となった人類は、空腹や病気で死ななければならない。そこでいつも決まって、飢餓と疫病が、社会成長する社会の発展を打ち砕いてきだのだ。(P. 13-14)

ヨーロッパの隆盛が重要なのは、
産業革命、原料の輸入と製品の輸出という経済モデルにより、
このマルサスの法則が打ち破られたという点。
そして、その後の競争の種となる国民国家の発明、
「利益=欲望」という道徳観を打ち破った経済学(アダム・スミス)の確立であろう。

本書におけるコーエンの主たる議論の1つは、
ヨーロッパの隆盛により生まれた世界構造においては、
国家間の戦争や大恐慌は「予期せぬトラブル」ではないということだ。
曰く、
「二十一世紀の多極化する世界を理解しようとするのであれば、
ヨーロッパ史を繙いてみればよい。」(P. 18)のだ。
経済成長が国家を好戦的にするという説も複数引用されている。

経済成長を是とし、
国家間が競争を続けていく仕組みにおいて、
問題は戦争や恐慌だけではない。
肝心の経済成長自体にもエコロジカルな限界があり、
経済成長によって人間の幸せは満たされないという(イースタリン等)話は、
多くの識者が指摘している点である。

本書後半部分では、
現代の分析から今後への展望、懸念が示される。
キーワードはグローバル化/サイバー化。

固有の特性を持ちつつも、
「覚醒」した国民国家として経済成長を目指す中国、インドには、
上記のような懸念も当てはまるだけでなく、
その人口が故の環境への影響も心配される。

環境破壊については危機が迫っており、
人類が解決すべき最大の問題。

原料を輸入し、製品を輸出する経済から、
コンセプトを売るようになった先進国においては、
「市場からの調達資金により、
「工場も従業員もいない企業」をつくりあげるというウォール街の新たな夢が実現した。」(P. 266)という。

当然の結果ながら、
その「非物質的資本主義」の世界においては、
アメリカの覇権がしばらく続くと予測されている。

「悪徳の栄え」という表現はいささか過激ではあるが、
分析の1つ1つは非常に地に足の着いたものと言えよう。
こうした分析から、
コーエンは導き出す人類が進むべき道とは以下のようなものだ。

人類は、ヨーロッパが十八世紀以降にたどってきた道筋を、精神的には逆方向にそうはしなければならない。つまり、世界は無限であるという考え方から、世界は閉じているという考え方への移行だ。(P. 301)

シンプルな提案に聞こえるが、
コーエン自身が認めるように不確実な話でもある。
「先進国」の暮らしを昔に戻すことは不可能であろうし、
「途上国」が環境に負荷をかけずにそのスタイルを真似ることも無理であろう。

大きなパラダイムシフトが起きない以上、
環境への負荷が小さいエネルギー等、
新たな技術革新に期待するしかないということなのだろうか。

近年、同様のテーマを扱った類書が多く出ていることから、
それらとの比較もおもしろそうである。
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Author:バッタンバン長
カンボジア王国バッタンバン在住、バッタンバン長です。
バッタンバンを中心に、開発援助業務、大学講師、社会調査、日系企業進出・投資のお手伝い等をやっております。
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