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バッタンバンで晴読雨耕

バッタンバンを中心としたカンボジア北西部の情報ブログ-大学教育、地雷、農業、開発、投資に関する話題から ホテル、レストラン情報まで

 

書籍 「経済成長という病」

経済成長という病 (講談社現代新書)経済成長という病 (講談社現代新書)
(2009/04/17)
平川 克美

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別々に発表されたエッセイをまとめたものであるため、
各章において様々な視点が示されるが、
コアとなるアイデアは題名のとおり。

日本について書かれた内容が多いが、
経済成長は万国共通のテーマである。

ポジティブな響きしかない「成長」という言葉を
「病」と言ってしまうところが本書のおもしろさでもあり、
議論を呼ぶ点でもあろう。

以前ここで紹介した本の中には、
発展やdevelopmentへの疑いを示すものもあったが、
「病」という言葉が示す通り、
平川の視点は更にその先を行くものである。

では、平川の見る経済成長とは何か?

話を分かりやすくするために実質国民総生産の増加を経済成長だと定義してみる。要するに市場に供給する生産物、サービスの増加が経済成長だと考えてみる。文明化が一定の水準に達し、消費者の手元に必需品としての生産物がいき届いた時点で、需要は原則としては買い替えのための消費だけになるので、経済は成長することを止めて均衡へと向かう。もし、この段階で人口減少が起これば総需要は更に減少することになり、経済成長はマイナスの局面に入ることになる。簡単な算術である。
しかし、何故か現実の世の中では、与党の政治家も野党の政治家も、企業家も、経済学者も、メディアも、一般の人々も「経済は成長しなければならない」という観念に支配され続けている。小泉政権下のスローガンは、「改革なくして成長なし」というものであった。(P. 64-65)

・・・世間にダイエットという言葉が流行し始めたとき、経済成長はその本来の動機を失いつつあると思うべきではないのか。
食料を過剰に摂取し、肥え太って動けなくなり、何とかしなければならないと思ってスポーツジムに通い、ルームランナーで余分な水分を搾り取るというのは、どう見ても間尺に合わない行動である。しかし、自分がブロイラーのニワトリのような生活をしていても、やがてそれが奇妙だとは思わなくなる。より効果的なダイエット器具が開発され、新たな需要が喚起される。
こんなことがいつまでも続くと考えるほうが不自然である。(P. 69-70)

平川は社会の発展と出生率の低下を論じるエマニュエル・トッドの人口学に基づき、
経済成長が人口減少を引き起こす可能性を指摘、
現在の日本のように経済成長を促すことで少子化に歯止めをかけるというのは、
むしろ本末転倒の議論だとも論じる。

では、我々にはどのような選択肢があるというのだろうか?
経済成長への懐疑やそれとの離別を唱える類書は多いが、
それに取って代わる強い指針が示される例は少ない。
「病」対する「薬」はあるというのだろうか?

残念ながら、
本書においても強い指針、
「病」への「処方箋」示されることはない。

ただ、自分たちの「病」を自覚し、
すでに訪れ始めている均衡、或いは退化の時代に向け、
我々ひとりひとりが子どもの頃のように未来図を描いてみることを勧めるのだ。

「私には、今の子どもたちにとって未来図を描けというのは、
案外難しい課題であるように思われる。」(P. 223)
という平川の指摘は、
子どもだけでなく、我々大人にもにも当てはまるものでもあるだろう。

日本の子たちはどんな未来図を描くのだろう?
カンボジアの子どもは?
そして、自分はどうだろう?

本書の続編として書かれた、
以下もオススメである。

移行期的混乱: 経済成長神話の終わり (ちくま文庫)移行期的混乱: 経済成長神話の終わり (ちくま文庫)
(2013/01/09)
平川 克美

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プロフィール

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Author:バッタンバン長
カンボジア王国バッタンバン在住、バッタンバン長です。
バッタンバンを中心に、開発援助業務、大学講師、社会調査、日系企業進出・投資のお手伝い等をやっております。
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