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バッタンバンを中心としたカンボジア北西部の情報ブログ-大学教育、地雷、農業、開発、投資に関する話題から ホテル、レストラン情報まで

 

書籍 「なぜ貧しい国はなくならないのか」

なぜ貧しい国はなくならないのか 正しい開発戦略を考えるなぜ貧しい国はなくならないのか 正しい開発戦略を考える
(2014/03/20)
大塚 啓二郎

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はじがきには、
「開発経済学の研究の世界と開発援助の世界との架け橋になること」(P. 5)が
筆者の願いとある。

ややもすればクリシェで終わりそうな言葉だが、
開発経済に関する単なる解説ではなく、
研究と基に具体的な政策や行動のための提言に焦点が置かれており、
その言葉に見合った内容と言っていいであろう。

様々な定義が可能であろう開発経済学についても、
「貧しい開発途上国の貧困削減に貢献する戦略を研究する学問分野」(P. 12)と
頼もしく、また明確な言葉が綴られる。
開発援助に関する最近の議論もカバーされており、
それらを踏まえて何をしようか、すべきかと考えている読者層にはうってつけの一冊ではなかろうか。

本書は以下の3部から成る。
第I部 何が問題なのか?
第II部 何が起こっているのか?
第III部 してはいけないこと、しなくてはいけないこと

問題を定義し(第I部)、
問題を分析し(第II部)、
その解決策を示す(第III部)という構成は非常にロジカルで分かり易い。
世界の貧困という大きく複雑なテーマを
これだけ簡潔にまとめられる知識と技量は素晴らしい。

第III部は更に、
途上国がしてはいけないこと(第6章)、
途上国が「豊か」になるためにすべきこと(第7章)、
世界がもっと真剣に取り組むべきこと(第8章)
に分けられる。
いずれも具体的な項目について、
具体的な説明が並んでおり、
専門的な予備知識がなくとも十分理解できる話ばかりだ。

途上国がすべきではないことの中には、
最低賃金制度も含まれているのが若干の驚きだろうか。
(高い最低賃金によって産業が衰退することは理解できるが、
制度そのものを設置すべきではないとも読み取れる。
制度そのものがいけないという意味であれば、
議論の余地はあるようにも思われる。)

途上国がすべきことは、
農業と製造業の発展戦略というで示されている。
特定の国を対象とした話ではないため一般論となるが、
こちらはすでに多くの援助機関が実践していることに近い、或は等しい内容だ。
大塚の見方に従えば、
開発援助業界が進んでいる方向は概ね正しいと言えるだろう。

開発経済学の研究者は、
「①農業や産業の長期的発展プロセスを実証的に究明し、
②その理論家に努めるとともに、
③実験可能な重大な事柄については、その真の重要性を数量的に評価するようにすべきである。」(P. 227)
としている。
実践者、研究者それぞれに向けての提言があるのが本書の特徴の1つである。

本書の最終章のテーマは地球環境の保護。
貧困の削減と合わせて解決されるべき問題として、
世界がもっと真剣に取り組むべきこととしてまとめられている。

開発・発展ありきという開発経済学というものには違和感を感じるが、
本書のような貧困削減のための学問という位置づけは、
個人的には非常に受け入れやすいものだ。
それ程ラジカルな提言もないために、
目から鱗という訳ではないが、
開発に関わる人間にとってのよいロードマップが手に入った思いである。
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プロフィール

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Author:バッタンバン長
カンボジア王国バッタンバン在住、バッタンバン長です。
バッタンバンを中心に、開発援助業務、大学講師、社会調査、日系企業進出・投資のお手伝い等をやっております。
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