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バッタンバンで晴読雨耕

バッタンバンを中心としたカンボジア北西部の情報ブログ-大学教育、地雷、農業、開発、投資に関する話題から ホテル、レストラン情報まで

 

カンボジアに対する中国の影響

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2015年頃から気になり出したカンボジアに対する中国の影響。経済、社会分野での影響を中心に、報道や統計、これまで見聞き、体験したこと等をまとめてみようと思う。
(金額等は元データや為替によって若干の上下があるため、あくまでご参考まで。)

まずは、とにかく目立つようになった中国人の数について。2019年にカンボジアを訪れた中国人の数は約240万人になると予想されている。今年10月までの統計では約200万人、月平均にして約20万人である。この数字は外国人渡航者全体の約4割弱を占め、国別では1位、2位のベトナム(約70万人/年)に3倍近い差をつける程圧倒的なものだ。(日本は約20万人/年で中国の約1/12。)9月までにカンボジアを訪れた外国人の数は前年比10%増であり、ここにも中国人旅行者増加の影響が見て取れる。

中国人旅行者はいつから増え始めたのだろうか?10年前、2009年の統計では約12.8万人、2年前の2017年には約120万人であった。10年で20倍、2年で2倍等、色々な表現が出来そうだが、やはりここ数年大きく動いて来たことが見て取れる。

上述のとおり、カンボジアを訪れる外国人旅行者の全体数も増えているが、アンコール遺跡を訪れる外国人の数は逆に減っているという。2019年11月現在、昨年比14%減だ。カンボジア観光の目玉がアンコールワットであることを考えれば、非常に奇妙な現象である。

この一番大きな理由は、中国人渡航者の行動パターンの変化にあると考えられている。具体的には渡航目的と渡航先の変化である。渡航目的の変化は発給されたビザの種類に表れている。2018年に中国人向けに発給された観光ビザの数は約158万、商用ビザは約44万と約3:1の割合だ。2019年は、10月までに観光が約100万、商用が約94万と商用が観光に肩を並べるまで増加している。商用渡航者は遺跡観光には行かないという説が成り立つだろう。

渡航先の変化にも、やはり遺跡の町シェムリアップからのシフトが見て取れる。新たな渡航先として、シハヌークビルが人気を増して来ており、シェムリアップ空港に到着する旅客数全体も減少しているのである。後述のとおり、シハヌークビルは「リトルチャイナ」というより、中国そのものと呼んでもよさそうな程に変わってしまっている。

次に在住者数を見てみよう。ある報道によれば、その数は約25万人であり、在留外国人全体の約6割を占めているとのこと。歴史的に見れば、隣国ベトナムからの流入が多かったはずだが、いつの間にか中国人が過半数を占めるようになっている。イオンが出店し、増えたと言われる日本人の在住者数がその約1/70、約3,500人であることを考えれば、中国人の数字がどれだけすごいかが分かる。(中国大使館や中国版ウィキペディアの百科等では、「在留中国人」の数ではなく「華僑華人」の数として100万人という数字を示しているが、ここは定義の違いである。)

約25万人のうち、その多くはシハヌークビル、プノンペンに集中していると考えられ、シハヌークビルではビジネスの9割以上を中国資本が抑えるまでに至っている。156のホテルのうち150、62のカジノのうち48、436のレストランの95%が中国資本という内訳だ。人口約16万人のビーチタウン/港町に、その半数に当たる約8万人の中国人が新たに住み着き、ほとんどの商売を牛耳るようになったという衝撃的な話だ。信じがたい気もするが、現地における個人的な経験からも、この数字はそれなりに頷けるものである。

(追記:年が明けての新聞報道では、2019年6月現在、国内にあったカジノの数は163。これが規制により、2019年末現在で136に現状し、この8割が閉鎖すると言われている。また、この規制により、45万人の中国人が出国したとの報道もあった。在住者が25万人であったならが、45万人の出国者では算数が合わないが、32万人の在住者も受け入れたということなので、25万+32万-45万=12万ということか。)

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中国のカンボジアに対する援助や投資、2国間の貿易はどのようなものだろうか?渡航者数同様、対カンボジアの援助についても、日本が中国を上回っていたのは過去の話で、この分野でも中国は大きな存在感を示している。2015年の時点で、援助額は国別1位となっており、全体で約10億ドルの援助額のうち20~30%を占めるに至っている。今年の初めにも、北京においてフン・セン首相と会談した習近平主席は、2019-2021年の3年間に40億元(約5.8億ドル)の支援を表明し、継続な支援が続けられている。他の援助国よりも、安価な商品や労働力を有し、民主的なプロセスも不要なため、同じ金額であってもより大量の品、サービスが、より迅速に提供されるといのも中国援助の特徴である。また、軍や警察といった組織に対する援助にも規制がない(ように見える)のも他国にはない点だ。シハヌークビルに建設中の港に至っては、軍港ではないかとの噂(?)がメディアを賑わせていた。

商用渡航者の増加からも推測出来るとおり、投資分野ではより大きな存在である。2012年から2016年まで、年間30~50億ドルの投資のうち、中国は2割程度を占めており、2019年上期52億ドルの投資うち、25.4%が中国資本とのことだ。68.4%がローカル資本とのことなので、実質上カンボジア、中国の2国が占有している状況である(ローカル資本は当たり前だが)。1994年から2017年までの中国からの投資額の合計は126億ドルとのこと。中国投資が向かう先はシハヌークビルの他、プノンペンやシェムリアップ、やはりカジノのあるポイぺトやバベットで、分野はホテルや娯楽施設(カジノ、スパ)、レストラン、商業施設、コンドミニアムである。土地付き物件の取得の場合、外国人、或いは外国人が主たるオーナーである企業では不可のため、通常カンボジア人のパートナーを見つけることになるが、中国人の場合、自らがカンボジア国籍を取得し、オーナーになるケースも少なくないようだ。

(追記:年が明けての新聞報道では、2019年の海外直接投資の金額は前年比11.7%増の35.88億ドルで, 内訳は順に中国(43%),韓国 (11 per cent)、ベトナム(7%)、 日本、シンガポール(それぞれ6%)、その他(27%)とのこと。後述の理由でその他の内訳が気になる。記事のソースは国立銀行の報告書。見てみよう。)

カンボジアの貿易額は200億ドルを超えるレベルにあり、2016年の統計では輸入額が120億ドル、輸出額が100億ドルであった。中国は輸出先として上位には来ないものの、輸入元としてはトップであり、120億ドルの36.8%、46億ドル程を占めている。両国の貿易額は2016年が48億ドル、2017年が58億ドル、2018年は74億ドルで、この内訳は輸入額60億ドル、輸出額14億ドルである。輸出相手としては、アメリカやヨーロッパ諸国が上位に並んでいるが、EUは政治的な理由からEBA(Everything but arms/武器を除く全て)を対象とした関税特恵制度の撤廃も示唆しており、中国が存在感を増す可能性も小さくはない。

以上の点にウィキペディア、CIAファクトブック等から数字も加え、大雑把にまとめてみよう。

カンボジアの人口は約1,600万人。60万人強の外国人が住み、そのうち25万人が中国人。1 年に約600万人の外国人が訪れ、そのうち200万人以上が中国人である。
カンボジアのGDPは244億ドル。 GDPは76%の個人消費、5.4%の政府支出、23%の投資、-4.4%の貿易収支から成る。貿易では114億ドル分を輸出、144億ドル分を輸入。輸入の4割弱が中国から。国家予算44億ドルに対し被援助額が10億ドル。被援助額の2~3割が中国から。

比較のため、日本の統計もまとめてみよう。

日本の人口は約1.2億人。270万人強の外国人が住み、そのうち76万人が中国人。1年に約3,100万人の外国人が訪れ、そのうち800万人以上が中国人である。
日本のGDPは5.15兆ドル。GDPは55%の個人消費、19.6%の政府支出、24%の投資、0.9%の貿易収支から成る。貿易では6,890億ドルを輸出、6,450億ドルを輸入。輸出先の2割弱、輸入元の25%程度が中国。国家予算は2兆ドル前後。
(これをカンボジアのスケールで考えると、1.2億人の人口に、450万人の外国人が済、そのうち188万人が中国人。1年に4,500万人の外国人が訪れ、そのうち1,500万人が中国人。)

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なんとなくの全体像が見えたところで、補足的な統計データやニュースを引きながら、更に深層の真相に迫ってみよう。

まず、受け入れ側のベースとなる部分、華僑華人についてだ。中国系のメディアはこれをまとめて100万人としている。個人的な経験からも(市場では中国語での会話が多い)、特に都市部、金融業や商業には中華系カンボジア人が圧倒的に多いと考えている。国内各地に点在する中華学校では、2013年時点で約3万人が学んでいるとされていた。孔子学院を通じた援助もあり、現在この数は増えていると思われる。それだけの中華系住民、中国語話者がいるのだから、中国人、中国企業をスムーズに受け入れる素地はあるのである。

今年、話題となったニュースの1つは中国人の「エクソダス」(大脱出)である。上述のとおり、大量の中国人が押し寄せた一方、8月18日にカンボジア政府がオンラインカジノに対する規制が発表した直後、9月には10万とも15万とも言われる中国人が出国をしたと報じられている。シハヌークビルを筆頭に国内には数多くのカジノがあるが、客はこの国を訪れる観光客だけではなく、オンラインでのサービスも大規模に展開されており、違法営業も数多あるとの話もある。加えて、カジノを通じた資金洗浄やVOIP詐欺といった犯罪も横行しており、中国政府、カンボジア政府が協力し規制強化に乗り出したというのが実情のようだ。具体的な数字はともかく、プノンペン市内某所で夜逃げのような格好で引っ越しを行う中国人グループ(30~40名程度)を目撃したこともあり、こちらの報道についてもそれなりに納得ではある。(在住者25万人からこれらの数字を単純に引いて考えてよいのかは不明だ。)

こうした流れの中、カンボジアにおいて拘束、中国へ強制帰国させられる中国人の数も急増しているようだ。今年9月、中国の28省にまたがる計10,000人から1,400万ドル(約15億円)を騙し取ったとして、150人程の中国人が拘束されたと報道された。11 月には、シハヌークビルをベースにした国際的組織に対し、各国の警察組織が連携して動き、関係者の逮捕に至ったという報道があった。こちらの被害額は43億ドル(30億人民元/4,730億円)。別の報道では、今年カンボジアで逮捕、拘束された中国人の数は1,000名を超えたとされている。

Chinese Civilization

さて、こうした中国の動きの背景には、如何なる状況があるのだろうか?端的に、中国の進出の理由とは何であろうか?また、カンボジアがこれを受け入れるインセンティブとは何であろうか?

進出する側の中国を考える場合、やはり習近平国家主席のリーダーシップ、特に「一帯一路」に代表される積極的な外交政策が第一に挙げられる。これは新たな経済圏の構想・試みであるが、その背景には、2013年の国家主席就任におけるスピーチのキーフレーズ「中国の夢」という考えがある。2010年、中国でベストセラーとなった書籍のタイトルでもある「中国の夢」(劉明福・著者)は、同書によれば「中華民族の偉大な復興」を意味し、国際政治の分野で言えば、中国が世界のリーダーになることを意味する。「一帯一路」はそのための外交戦略と位置付けられる。アフリカや南アジアの国で行われているように、当地においても中国援助が空港や港といったインフラに向かうのはこの流れによるものだろう。他方、カンボジアからすれば、欧米による民主化のための支援であろうが、中国の「一帯一路」であろうが、経済大国の協力を得て、自国の成長を進めようというのは当然の選択である。ここで両者の思惑は一致するのである。

「中国の夢」や「一帯一路」に基づく中国の積極外交、これを利用した成長戦略を取るカンボジア政府という構図は明確だ。しかし、これだけで全ての事象を説明するのには無理があるのも事実だろう。中国の経済成長により観光客が増えること、政府が主導し、積極的な援助や対カンボジアの輸出が増えることは説明がつくが、投資についてはシハヌークビルである、カジノである。リゾート開発と言えば聞こえはいいが、要は賭博だ。しかも、それに付随するような犯罪が増えていることは、夢を語る世界のリーダーの姿としては疑問符が付くものだ。渡航者や在住者がこれだけ増えたのだから、中には悪い者もいるという確率論で説明のつく話でもない。組織的に、計画的に犯罪行為を行うために渡航、滞在している集団がいるのである。かつてこの地を占領したフランスも、自国出身のゴロツキに悩まされたという話が思い出される。

さて。ここからは推測も交えた話になる。中国経済のバブル崩壊、土地ころがし経済の終焉の噂はあちこちから聞こえて来ており、中国経済の成長は止まったという説も出回っている。キャピタルフライトやら資金洗浄の報道も絶えない。先行きが不透明な中国で、資産を人民元で保有しておくというのは確かにリスクが大きい。カンボジアは小国ながら米ドル経済で、資産保有をする場としては悪くない。経済成長の伸びしろも中国より大きい。かと言って、自由経済ではないため、資産を簡単に海外に移すことも出来ない。

2019年上半期にカンボジアに投じられた52億ドルの投資について戻ってみよう。既述のとおり、52億ドルのほとんどはカンボジア(68.4%)、中国(25.4%)からの投資であった。それらに続く国は、イギリス領ヴァージン諸島、タイ、イギリスである。タイ、イギリスはともかく、第3位がカリブの人口3万人の島とは?投資額は150百万ドル、日本円にして160億円に上る。中国からの投資はODIと呼ばれる正式な手続きによるもので、諸島からの投資はただの抜け道で元々の資金は中国ということはないだろうか?今年に入り、カンボジアは資金洗浄に係るグレーリスト国に再び戻されている。

これからのカンボジアに対する中国の影響を予想するのは非常に難しい。1つのポイントは、中国経済の先行きによるであろう。目下、米中対立真っ只中。そうでなくとも経済成長に陰りが見える中、この大国は今後どう立ち振る舞っていくのであろうか。経済規模の差から、中国が躓けば、こちらが大けがを負う可能性もある。逆に、沈む船からネズミが一気に逃げ出し、この地を目指して逃げ出して来ることもあり得る。今後を占うためには、中国を含めた大国の動きからは目が離せないということだ。
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Andrew Yang (アンドリュー・ヤン)とMATH

他の国や国民を羨ましいと思うことはそれ程ないのだが、
Andrew Yangのような大統領候補者が出てくるアメリカはいいなあと思ってしまった。

それだけ今のアメリカの状況が酷いという見方も出来るのかもしれない。
酷い状況だからこそ有能な人(または少なくともそう見える人)が目立つと。
しかし、それを差し引いて考えても、
Yangのスピーチには見入ってしまう魅力があるのも事実だ。
他の国においても、また過去の大統領選においても、
税金や社会保障、教育、外交の話が面白くなることは中々ないのだが、
Yangの話は直接的な利害関係のない日本人の自分が聴いていても面白い。

保守派の論客、左派をこき下ろすのが大得意なBen Shapiroですら、
Yangとの議論は楽しんでいる様子が伝わって来るし、リスペクトも感じ取れる。
Joe Rogan(UFCの人!)とのトークも面白かった。
先日開催されたオハイオでの候補者討論会でも限られた時間でしっかりとした存在感を示した。
個人的には圧倒していた印象だ。

18歳以上の国民には1,000ドル/月のベーシックインカムをというのが主たる主張で、
他の候補者との大きな差別化に繋がっている。
面白いのはそのラジカルな政策だけではない。

スピーチで繰り返される
「トランプの真逆は数学の得意なアジア系!」
という挑発的なパンチライン。
トランプ大統領の「MAGA(Make America Great Again)」に対する、
「MATH(Make America Think Harder)」という秀逸なコピー。

トランプは「数学の出来ない白人」という皮肉にもなっているが、
後者は当然算数(Math)とも読め、
「アジア人は算数が得意」というステレオタイプ自体もジョークにしてしまっている。
(実際、SAT等での平均点は高いのだが。)

何気なく見始めたYangのスピーチに見入ってしまい、
気が付けばすっかり「Yang Gang」になってしまった。
ここでもしっかりライミングしてるし、
アジアテイストがWu-Tang Clanっぽくていい。

今のところ大手メディアにはあまり注目されてはいないが、
New York Times等の大手メディアは4年前にも大コケしているので、
今回もそれに期待してみたい。

 

書籍 「民話の思想」

本書を読み、子どもの頃に慣れ親しんだ昔話のことや、
カンボジアで見聞きした話のこと等、
様々なことに考えを巡らせることとなった。

子どもの頃に読んだ民話(というよりは童話や昔話)には何か教訓めいたものがあり、
簡単に言えば、正直で勤勉に生きることが正しいという価値観があったように思う。
「花咲じいさん」、「サルカニ合戦」、「鶴の恩返し」といった日本の昔話に限らず、
「金の斧、銀の斧」、「ウサギとカメ」、「アリとキリギリス」等といったお話にも、
そんな価値観が反映されていたように思う。

本書では日本各地に伝承されて来た様々な民話が紹介され、
その中に透けて見える伝統的な価値観、思想についての考察が行われる。
似たような話でも場所や時代によって異なる展開や結末であったりするのも面白い。
本書における価値観、思想についての考察は、
「善人と悪人」、「民話と外来思想」の2つに大きく分けられる。

前者については、「またうど」という人の在り方に係るものが中心だ。
これは「花咲じいさん」で言うところの「正直じいさん」に当たり、
子ども向けの昔話においては「正直じいさん」は「意地悪じいさん」という単純な対比となるのだが、
元の民話における「またうど」はもう少し複雑な定義を持ったものであるそうだ。

「またうど」は名詞であり、完人、全人、正人、真人の字が当てられ、
いずれも「またい」者のことを指す。

では、「またい」とは?
明代の中国で書かれた「日本風土記」では、
「至誠人」が「莫打許多(注:マタヒトの音訳、またい人」と訳されているそうだ。
「またい」の1つの解釈は至極誠実であることとなる。
また、1603年刊の「日葡辞書」では、
「純な、素直な、また、正直な」となっているそうだ。(P. 14)
1867年刊の「和英語林集成」では「またい」のシノニム(類義語)として、
「スナオ」、「オトナシイ」が挙げられているとのこと。(P. 22)

温和にして「腹立てず」の性格が、「またうど」の要件であったことは、『仁勢物語』第10段、「父はまたうどにて、母なむ立腹なりける」という一説に語りつくされていよう。(注:「花咲じいさんの元の1つである「枯れ木に花咲かせ親仁」が)愛犬を惨殺され、いじわる爺から、「泣く事はござらぬ」などと叱られながら、腹も立てず、文句も言わずに、松の木を受け取って帰る「オトナシイ」性格。「オトナシイ」という性格は、「弱い」という性格に通ずる一面を持つ。特に、「またい」の語を「弱い」という意味で使用している高知方言(『上ノ加江町史』)の存在をかえりみるとき、正直で温和なこの爺さんが、いかに昔話の主人公たるにふさわしい善良な弱者だったかということがよく理解されると思う。(P. 22-24)

おとなしさも、お人よしも、ここまでくれば、ほとんど即身成仏の感がある。いわゆる「仏のようなまたうど」(幸若「鳥帽子折」)として、生きながら仏の待遇を受けたのも、もっともだといわなくてはならない。むろん、いつの時代にも、知識人は、こうした種類の善人を、軽蔑の眼でしか見ようとはしない。(中略)
馬鹿だろうが、お人よしだろうが、伝統志向型の社会においては、「正人(またうど)」こそが善の理想像であった。(P. 59-60)

正直、親切、勤勉といった好ましい性格が「またうど」の要素ではあるが、
同時におとなしく、弱いといった一見マイナスの要素もこれに含まれているのだ。

そして「またうど」と対比されるのが「隣の爺」である。
「花咲じいさん」でいう「意地悪じいさん」がこれに当てはまる。

(省略)あるときは「いじわる」。あるときは「慾深」、あるときは「怠惰」など、さまざまな角度から描写されている、あの隣の爺は、いったいどのような呼称で包括的に把握したらよいか。かれのばあい、その性格的特徴は、慳貧性と懈怠性の二つに要約された。(P. 114)

まとめれば、本書における佐竹の主張は、
日本の民話における善人の象徴が「またうど」であり、
悪人の象徴が「隣の爺」という価値観が基本構造にあるというものになる。

それでは、外来思想の影響とは何か?
仏教思想に基づく「因果」、
儒教思想に基づく「天命」、
両者と関連する「孝」である。
(「孝」の要素は外来思想とは別にそもそも「またうど」の要素であったとも理解されるようだ。)

日本の民話は「またうど」、「隣の爺」という基本構造をベースに、
こうした外来の思想が加わり、様々な形で発展し、伝承されて来たというまとめになろうか。

しかしながら、色々な昔話を考えてみると、
「桃太郎」や[金太郎」やのように語り継がれてはいるものの、
あまり思想や教訓めいたものがないものもあるように思われる。
これらの話はどのようにして語り継がれるようになったのだろうか?
娯楽の少ない時代のエンタメだったと片付けてしまっていいのだろうか?

次は「カンボジアの民話世界」や他のカンボジアの民話集に当たって、
日本の民話との類似性や非類似性について考えてみたいと思う。


 

コンテナバー

プノンペン、シェムリアップ、ポイぺトと続いたコンテナバーが、
バッタンバンの川沿いにも登場した。

オープン早々に中年の友人と訪れてみたが、
主たる客層は地元の若者。
スマホを片手に写真を撮る姿は日本の若者と同じなのであろう。

Container Bar 1

音楽がうるさいのはカンボジアの飲み屋(ビアガーデン)としては当たり前なので我慢するとして、
コンテナに合わせるためか、
ちょっと高めに設定された椅子には居心地の悪さを感じてしまう。

Container Bar 2

中は確かにきれいに作られており、
スマホで写真を撮り、facebookにアップし、「いいね」をもらうのには都合がよいのだろう。
instagramはそれ程やっていないように思うので、
facebook映えするということか。

Container Bar 3

プノンペン、シェムリアップ、ポイぺトのいずれでも訪れてみたが、
椅子だけでなくなんとも言えない居心地の悪さのみを感じてしまう。
ビールを片手にその居心地の悪さについて、
簡単に分析をしてみた結果が以下である。

・別にコンテナでなくてもよい。
・それ程目新しいメニューがある訳ではない。
・音楽がうるさくて会話が大変。
・椅子が高い。
・若者が多く疎外感がある。

ネガティブな発言だけとなってしまってはよくない。
ここから若者たちの新たな友情や恋が芽生えることを、
少し遠くから祈ることにしよう。

 

Café AmazonとKFC 

チェーン店の進出については数年前に記事にしているが、
また新たな波が続々と押し寄せて来ている。

まずは、このところプノンペンで無限増殖を続けているCafé Amazon。
これまでにオープンしているのは国道5号線の独立店と、
以前紹介したPTT内の店舗の2つ。

プノンペン同様、
シックなデザインの独立店に対し、
PTT内の店舗はアマゾンチックなデザイン。

Amazon 1

Amazon 2

Amazon 3

プノンペンやシェムリアップ同様、
客層は若者が多く、
コーヒー自体を楽しみというよりは、
その場にいるステータスやお洒落感を楽しむのが主目的と思われる。
実際、ガツンとしたコーヒーのオーダーは稀で、
甘いコーヒー飲料が売れ筋である。
一昔前の日本のスターバックスに似た状況と言えよう。

そして、日本でもお馴染みのKFCも川沿いにオープンしている。
フレンチコロニアル建築の建物の外観はそのままの形で利用しているところには、
敬意を表したい。

KFC.jpg

これらの他、
やはりプノンペンやシェムリアップで人気のコンテナバーや、
韓国風ラーメン、韓国系カフェチェーン店等もこの数カ月でオープンしており、
街の雰囲気もどんどん変わって来ている印象だ。

国内政治の動きなぞどこ吹く風。
若者にとってはお洒落であること、先端を行っていることのほうが大切というのは世の常なのかもしれない。
カンボジアの友人ら(皆軒並み中年)とは、
若者が多い店には入りにくいという共通の見解で一致している。

発展への喜びと過去への郷愁の間でオロオロする。
これぞオールドスクールの在り方である。

次回は意を決してコンテナバーについて記事を書いてみようと思う。

 

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プロフィール

バッタンバン長

Author:バッタンバン長
カンボジア王国バッタンバン在住、バッタンバン長です。
バッタンバンを中心に、開発援助業務、大学講師、社会調査、日系企業進出・投資のお手伝い等をやっております。
お問い合わせ等は、下のメールフォームからお願いします。

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